ムスリマのお部屋


ある五月晴れの日、アラビア純子に一通のメールが届きました。
私は、そのメールを見て、とても驚き、感動しました。それは、なんと、ムスリ マの方から送られてきたものだったのです。ここでいう『ムスリマ』とは、アラビア 語で『ムスリム』の女性名詞です。
私は、今までムスリムの方とはお話したことがありますが、ムスリマの方とはお 話させていただいた経験は一度もありません。彼女は、私にムスリマならではの意見 を送ってくれました。私が常日頃、疑問に思っていたこと、いろいろなお話を聞かせ てくれました。
そこで、みなさんにも、ムスリマの方のご意見をぜひ、ご紹介したいと思いまし た。私の胸の内にのみ、とどめておくのはあまりにも、もったいない話ですからね。
それでは、生のイスラームに触れてみましょう。
ムスリマの方との会話形式でいきますね〜。



1、タソアとアシュラ

こんにちは、はじめまして。私はムスリマです。

こんにちわ、アラビア純子です。
ムスリマの方からメールをいただけて感激です。

一昨日はタソアといい、断食の日でした。昨日はアシュラといいこれまた断食 の日でした。

ムハッラム月(ヒジュラ暦1月のこと)は、確か神聖な月の一つだと思いました けど、この時期に断食をするのが普通なんですか?それとも、自主的な断食なのでし ょうか??このタソアとかアシュラというのはどういう意味があるんでしょう??

アシュラの日はモーゼ(彼の上に平安あれ)が神に初めて話し掛けられた日で あり、ユダヤ教徒はこの日に断食をしていました。イスラームの預言者、ムハンメッ ド(彼の上に平安あれ)が、「私は貴方達より、モーゼに近い関係にある。もしアッ ラーが私を来年も生きさせてくれるなら、タソアとアシュラに断食をしよう。」預言 者はその年に亡くなってしまいましたが、これはハディースとして、ムスリムはタソ アとアシュラに断食をするのです。タソアとアシュラはスンナなので、断食をしなく ても、ラマダーン中とは違い罪になることはありません。でも断食をした方が本人の 為にはいいんですよ。一昨年に犯した罪を許してもらえるのですから。もちろん大き な罪は許されません。小さな罪とは、悪愚痴とか怒ったこととか:アッラーのみご存 知でありますが。「タソア」とはアラビア語の「9」ティサアからきたもので、「九 日(ここのか)」という意味でアシュラはアラビア語の「10」アシュラからきたも ので、「十日(とおか)」という意味があるのです。で、どうしてムスリムがタソア にも断食をするかというと、ユダヤ教と区別をするためだと思います。

ああ、そうですか。私は「9」はティスア、「10」はアシャラと発音していた ので、判りませんでした。
ということは、これはヒジュラ暦での9日目と10日目のことですよね?これは 毎月やるものなんですか?

9日目と10日目の断食の話ですが、すみません、説明が悪くて。ムハッラム の月だけです。説明をしたとおり、この月の10日にモーゼ(彼の上に平安あれ)が 初めて神に話し掛けられたのがきっかけですあ、もちろんヒジュラ暦です。



2、イエメンって魅力的?

ところで、イェメンとはそんなに魅力的な国なのでしょうか?アラビア純子さ んのホームページでよませていただき確かにおもしろかったのですが(私も行ってみ たいと思いましたが)、訪れるようなところはあるのでしょうか?確かに歴史的な国 ではありますが。夫の言うところには、「イェメンは昔のアラブ人のままで、昔とあ まりかわっていない」とのこと。アラブ好きのアラビア純子さんはそういうイェメン に魅力を感じたのでしょうか?

イエメンは、旦那様がおっしゃるように、国全体が古い歴史が未だにそのまま残 されているような国です。訪れるようなところは沢山あります。山あり谷あり、砂漠 あり、でなんでもござれという感じですが、なんていうのかな、ちょっと説明しがた いのですが、俗化されていないアラブを体験できる国だと思います。
U.A.Eやサウジアラビアは、発展しているので、街の雰囲気などは一見アメリカ 的ですが、イエメンは、まったく違う世界なのです。とても魅了されました。私は、 西洋文明がまだあまり入ってきていないイエメンが大好きになってしまったのです。 これは、百聞は一見にしかずといいますから、ぜひ、訪れて見てください。
しかし、キレイな観光地が好きな方には、適しない国だとは思います。たぶん、 インドとかが好きな方はイエメンも気に入るでしょう。

イェメンといえば、公衆浴場があるのにはびっくりしました。(新米ムスリム の私にははっきりとわかりませんが)イスラームでは日本のような裸のつきあいは禁 止されていると思うのです。ですから、そういう場所があるのには驚きましたが、女 性がすっぽんぽんじゃないのには納得しました。で、カートですが、アラビア純子さ んも思ったように思われますが、イスラームではハラーム(禁止)です。理由は麻薬 、酒同様、体や精神にはよくありませんからね。だからサウディアラビアでは禁止さ れているんですね。煙草も本当はハラームです。体に悪いですからね。でも多くの人 は、煙草はハラームじゃないと吸っていますが.....。体に悪い行為はイスラームで は禁止されているのが本当なのですが。

でもハンマームでは、若い女性はすっぽんぽになっていてとてもビックリしまし た。絶対に、裸にはならないと思っていたからです。
私もカートはハラームだと思ったのですが、イエメンでは堂々と市民権を得てい ます。それがとても不思議なのですが、今のところ、カートとイエメンは切り離せな いものらしいですよ。



3、一夫多妻について

サウディアラビアの女性の話(一夫多妻)ですが、あれは建て前でもなんでも なく本音です。コラーンを読んでいただければわかってもらえると思いますが。コラ ーンはご存知のようにイスラームにおいて聖典ですが、コラーンなしではアラブ人、 アラブ諸国の完全なる理解は無理だと思います。なんていったって、イスラームはア ラブ人の普通の生活に入り込み、大きな役割をはたしていますから。で、話を一夫多 妻に戻しますが、実際には一夫多妻というほうがめずらしいのです。一夫多妻という 法があるだけで、皆さん誤解や変な見方をしますが、実際多くの皆さんは一夫一妻で 、仲良くしてますよ。

そうですか。それは、安心しました。私はあれは、建て前なのかと思って心配し ていましたので。
私もコーランを持っています。日本ムスリム協会で発行したものです。イスラー ムというものは宗教というよりも、人々の生活や経済の基盤になっているのだと思い ます。初めてイスラム圏を訪れた時は、全く知識がなかったものでサウジアラビアで は、あのようなぶしつけな質問をしてしまいましたが、今では、いろいろ本などを読 みましたし、実際アラブ人からもお話しを聞いて、今現在では、一夫一妻が多いとい うことは知っています。それに、もし、第二婦人を貰う際にも、第一婦人の了解を得 なければ無理だし、それぞれの妻に対して、すべての面において平等にしなければな らないということも知っています。今、お金持ちじゃないイスラム圏などの男性は、 マハルなどの結婚資金を貯蓄するのにも大変な思いをしているから、一人を貰うだけ でも大変なのに、2人も3人もましてや4人なども貰う余裕はないとの話です。

ところで、私は、外国の方の基準でイスラームの国の女性と男性の関係をどう のこうのいうのは間違っていると思います。外国の方が「う〜ん?」と思うようなこ とも案外、その女性たちはなんとも思っていないのですから。例えば、ヒジャーブに アバーヤ。外国の女性達はこれを女性への差別だと批判していますが、とうのムスリ マ達はそんなことはぜんぜん思ってなく、反対に誇り高く思っているのが現状です。

私はアバヤは好きです。差別だとも思っていません。だって、ムスリマが満足し ているのに、他人がとやかく言うべきことではありません。価値観の違いを押し付け ているだけですよね。一時期、アバヤを着たくない、車も運転できないということに 抗議してサウジ女性が、デモを行ったようですが、今は、むしろ、アバヤを着て、ヒ ジャーブと被る人が増えているらしいじゃないですか。あれを被ると、外の世界から はこちらは見えないけれど、こちらからは外の世界が伺えますよね。だから、なんと いうか、アバヤを着ている時は、気分的に楽でしたね。でも、これは実際にこれを着 てみた人じゃないと判らない感覚だと思います。差別的でイヤだと思っている方は着 たくもないでしょうが。その点、サウジに行けて良かったと思いました。だって、外 国人も着なければいけないのですから。そうでもしないと、非ムスリムなのに、アバ ヤを着ている人なんてほかの国ではそうそういませんからね。

アラビア純子さんが日本ムスリム協会の発行したコラーンを持っていて安心し ました。残念なことにムスリムでない方が訳したコラーンは、いい訳で っても、変 な注解があったり、絵が載っていたりして、コラーンとしてはそぐわないものがあり ますので。で、たいしたことではありませんが日本ではコーランと発音していますが 、本当はコラーン(クルアーン)が正しいのです。ムスリムはイスラームを「The way of Life」と言います。まさにその通りだと私も確信しています。(日本語だと どうなるのでしょうかね?私はいい訳が見つけられない.....「人生の生き方」では 変な気もしますが....)

ええ、コラーンという発音や、クルアーンということはもちろん知っていますが 、一般の人には通じないですよね?クルアーンでは。コーランなら通じます。「The way or Life」は、そうですねぇ、「こうやって生きましょう(行きましょうの意味 も兼ねる)」ってとこでしょうか。



4、手の切断について

手の切断の話ですが、ディズニーのアラディンなどで見られるようなことは決 してないのです。この手の切断とかのことはイスラーム法(シャリーア)を習った人 でしかよくわからないと思いますが(だから私もよくは知りません)、普通は忠告を するんだと思います。思い犯罪の人はどうだか知りませんが、軽い犯罪の人(例えば 、パンとかの食べ物)は初めは忠告されるんだと思います。忠告もされたのに、その 行為を繰り返したときに手を切られるんだと思います。
イスラームは公平で正義です。理由なしに人の手を切ったりすることはないので す。厳しい法があるから(もちろん厳しい法のおかげだけではありませんが)、イス ラーム諸国は平和なんですね。多くの人は、この法を野蛮という見方をしていますが 、私に言わせれば厳しい法があるからこそその地域の安全を守れて、人々が幸せに暮 らしていけるのです。普通の人なら、殺されるのを承知しながら殺人やレイプをした りする人はいないと思いますからね。それだけ犯罪が起こらないのです。あと子供に 死刑を見せるかどうかですが、サウディ現地の人に聞いたことがあるわけではないの でよくわかりませんが、それはその子の親の判断によると思います。

盗みをした人は、はじめに忠告されるけれど、その忠告も聞き入れなかった場合 に、手を切断されるのですね。それは、初めて知りました。

覚えていて欲しいのですが、子供達はみんなイスラームとともに育ちます。そ の中で、犯罪をしてはいけないんだということを自然に学びます。もし人々がイスラ ームの教えに忠実に従えば、この法がなくても平和だと思います。でも人間は完璧で はありませんから、こういう法があり人々の安全、平和を守っているんですね。犯罪 の多い他の国々と比べれば、みんなが安心して暮らしていける場所の方がいいと思い ますが。
もうひとつ触れたいことがあります。私が初めてイスラム諸国へ行って驚いたこ とは、子供がすごく純粋なことです。これは多分多くのイスラーム国の子供たちに言 えることだと思います。これはすごくいいなと感心しました。10歳の子供が10歳 らしく。日本では、大人びた子供が多くなってきましたからね.....残念なことだと 思います。

ええ、全くその通りですね。私もイエメンで、子供と話していて彼等は、とても 純粋だと感じました。それに、かれらは、「イスラームは最高さ!」と豪語していま した。かれらは生まれ落ちた瞬間からもうムスリムなわけで、そういうことをひしひ しと感じた一件でした。



5、「アラビア純子のお部屋」について

アラビア純子さんのホームページはおもしろいので毎日訪れます。

ありがとうございますーー。ムスリマの方から面白いと言っていただけるのは、 とっても嬉しいです。
もし、これからも間違ったことなど言っていたりしたら、ぜひ、ご指摘お願いし ますね!
ちなみに、どこがどのように面白いのかぜひ、お聞きしたいのですが、教えてい ただけます?

私がおもしろいとおもうのは、私では経験のできないことだからです。結婚して 、家族もいますから一人行動はできませんし、イスラームでは女性の安全性を考えて 女性の一人旅は禁止されています。まず私はムスリマですから、知らない男性とは話 をしませんし、向こうも話し掛けてこない(はずです)。こういうふうに書くと何か 不満でもあるように思われてしまいますが、そうではないんです。幸せ一杯です(マ ーシャーラー)し、不満もありません。「純子のお部屋」がおもしろいというのはム スリムでない人たちのアラブに対する考え方など、私の知らない他のアラブ諸国のこ ととかがきけるからです。

私は日本にいたら社交性があまりないというか、人とバカ話などをして話を合わ せたりするのが苦手なもので(と言っても暗くはないんです、むしろ友達からは明る いと言われます)、おまけにお酒が全然飲めない家系で飲みに行ったりもしないから 、夜にあまり出かけたりするのは好きじゃないのです。
しかし、旅をすると違います。私の旅の目的は、「ムスリムってどういうことを 考えているのか?」を探るための旅なので、日頃本を読んだりして、疑問に思ったこ とを聞いたりします。そうなると、誰かに聞かなくてはイケナイのだが、誰も知り合 いはいない。となると、話しかけてきた人とか店員の人とか、偶然出会った人とかそ ういう人になってしまいますよね。それもイスラム圏では、女性と話すことが難しい ときてます。特に外国人女性(非ムスリム)には何をやってもいいと思っているムス リムもいるので、要注意です。まぁ、危ない奴は大体判別がつきます。
「純子のお部屋」に登場する方々は結構なアラブ好きな人が多いですから、何に も知識のない日本人とは違うと思います。でも、私の対象としたいのは、全く今まで 知識がなかった人もです。イスラム諸国って極端にスキキライが別れると思うのです 。初めっからキライな人はいつまでたっても理解できない。そういう人は対象外にし て、なんだか全然知らないって人には、キライにならないようにしていきたいのです。



6、最後に

私は日本人ムスリムの方(一緒にサウジに同行してくれた方)とはお話したこと がありますが、サウジでは、なにしろ、こちらのイスラームの知識が全然なかったの で、今、考えると残念でしかたありません。その方は、アズハル大学のイスラム学科 を卒業された方で、サウジ人にもけむたがられる程の真面目なムスリムでした。その 方がサウジに同行してくれなかったら、サウジでの滞在はもっとつまらないものにな っていたかもしれません。イスラームへの興味を開花させてくれたその方に、私はと ても感謝しています。それにその方がとても人間的に素晴しい方だったので、私が今 まで接したことがなかったムスリムに対してとても好感を持ちました。
今まで、いろいろと自分なりに本などを読んでみて、疑問に思ったことなどを聞 きたくても、私の周りには、ムスリムの方はいません。ですから、旅にでることによ って自分の目で見てみようと思いました。
しかし、旅に出ても相手は、外国人のムスリムですから、そうそうそんなに詳し いことは聞けませんでした。
ですから、日本人のムスリマの方とお話できるなんて今まで夢にも思っていませ んでしたので、メールをいただいたときはホントに嬉しかったです。それに私が疑問 に思っていること、「純子のお部屋」で話題になっていたことなどに対して、いろい ろ教えていただいて、私のホームページ制作に力になっていただきました。どうも、 ありがとうございました。シュクラン!!


もう、帰りたいよぉ〜ってな方は、こっち