「自己補対の原理」への致命的な誤解・曲解

重大な誤りのある文書(執筆者 永井 淳)と、その問題点を下に示す
電子情報通信学会誌 Vol. 80, No. 5, p. 424, 1997年5月
問題点の指摘


上に示す
1997年の永井 淳氏の記述の右段上部(3―7行目)の問題点について説明すると、以下の通りである。

この部分は、Rumsey 氏の論文についての説明であるが、その表現には重大な誤りがある。

V. H. Rumsey は自己相似アンテナでは周波数をn倍にし、大きさを1/nとすれば元の特性を示すから、このアンテナと自己補対アンテナとを組み合わせればFrequency Independent Antennaができると考えて、」

と記しているが、実は

V. H. Rumsey は対数周期自己相似形状のアンテナはその特性が対数周期的に変化するので広帯域性は無いが、その対数周期自己相似アンテナを自己補対形状にするとFrequency Independent Antennaができると考えて、」

が正しいのである。元来、自己補対アンテナの形状には無限に多くの形状があり、その中のたった一つの形状である対数周期的自己相似形状の自己補対アンテナを実用化したのが、Rumsey 氏らの研究である。しかも、虫明康人は対数周期アンテナが米国で開発された直後に、非自己補対形状の対数周期アンテナには広帯域性が無いことを実験的に確認し、1965年の学会誌に発表している。

併しながら、永井 淳氏が記述したこの説明を安易に信じた読者は、

     「自己補対アンテナは、対数周期自己相似形状の場合にのみ
     超広帯域性を持ち、他の任意形状の自己補対アンテは超広帯
     域性を持たない」

と理解することになる。即ち、永井 淳氏の記述は、「自己補対の原理」の一般性を否定して、その有効性を対数周期形状の場合に限定することになるので、永井氏は重大な誤りを犯していることになる。若しこれが同氏の「誤解」であれば、一研究者として力不足であって無責任極まりないといえるが、「曲解」であったとすれば社会倫理上の問題となる。研究者は、常に「科学的真実」に忠実であらねばならない。

このような状況にあった虫明は、永井氏の記述に対して手紙により質問と反論を何度か試みたが、訂正する気配は全く無かった。止むを得ず虫明は詳細な反論を1999年の学会誌に発表した。

この不愉快な事件に関連して、昔の不可解な記憶が虫明の脳裏を掠めた。それは1980年前後のことであったと思われるが、永井 淳氏に極めて近い某著名人から「自己補対アンテナの図面」を要求され、対数周期形状でない種々の典型的な自己補対アンテナの図面数枚を持参した。ところがその某著名人はその図面を見て、虫明を著しく軽蔑するような言葉を吐いただけで何の質問も意見もなかった。虫明は全く意味不明のまま、図面を置いて引き下がらざるを得なかった。

虫明は、1997年の不愉快な事件と1980年前後の不可解な記憶を繋ぎ合わせて考えることにより、日本の学術関連裏社会をほぼ知り得たものと考えている。

今日の細分化された専門分野間の公平・不公平の問題もさることながら、更に基本的な公正・不公正の問題こそが憂慮すべき重要問題である。

詳細な反論 関連諸学会への提案
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