純子のお部屋


2月9日

すっかりご無沙汰してしまって、「オイ、生きてんのかぁ〜??アラビア純子ってばよぉぉ〜〜」というメールをいただいてしまうような状況で、心配していただいた方々、ごめんなさーーい!!
ハイ!生きてますです!!
なんだか、9・11からの一連の出来事、考えれば考えるほど、何が真実なんだか訳わかんなくなって、自分でも何をどう書きたいのか?自問する毎日でした...。

今日は、今、気になっているあの彼の話です。

「米国人タリバン兵」と一躍脚光を浴びたジョン・ウォーカー氏、彼を初めて見たのは、憔悴しきった顔をして北部同盟の尋問をされている姿だった。
彼の顔は、ひげも髪もボウボウで顔も汚れていたけれど、彼の目はどこか優しい印象を受けた。
ジョン・ウォーカー氏は、「純粋なイスラーム」を求めて98年と2000年にイエメンに滞在している。
98年にイエメンと言えば、この私もアラビア語の勉強は一応の名目で、イスラームとは?を求めてイエメンに渡ったのだ。もしかして、かのジョン・ウォーカー氏ともどこかですれちがっていたかもしれない。
彼がなぜイエメンを選んだのか?それは、私にはよく判るような気がする。
イエメンは、純粋なイスラームを求める人物には最適の国だからだ。
それは、イエメン留学編を読んでいただければ理解していただけると思うが、イエメンは、一言では言い表すのが難しいけれど、イスラームの真の教えを心から理解している人が多い国だと思う。
そういうイエメン人に交じって彼は、イエメン人と同じ空気を吸って、同じご飯を食べ、同じ時を過ごしたかったのだろう。

アメリカに戻った彼の姿を新聞では『伸ばした髪を剃り、タリバン風のひげも落とし、「反逆者」のイメージとはほど遠い、少し内省的だが「普通」の米青年』と表現していた。
しかし、彼が「反逆者」のイメージとはほど遠い「普通」に見えるというのは、当り前のような気がする、と彼と同じ時期にイエメンに滞在したことがある私はそう感じる。
彼がどういう心理でタリバン兵となったかは、判らないが、きっと彼は、とても純粋な心の持ち主だと思う。
純粋すぎて、タリバンの道へと導かれてしまったのではないか?と思う。
彼なりのイスラームが、タリバン兵としての道だったのだ。

こう書くと、やっぱり、イスラーム=悪じゃないか〜!と言われてしまいそうなので、説明するけど、そんな単純なもんじゃない、イスラームってのは。
ムスリムじゃない私が偉そうに言えないけど、少なくても、私の解釈では、イスラームは、一言では言い表わせるものじゃなく、とても多種多様な解釈があると思う。
イスラーム世界の国々の歴史、習慣や文化などによってムスリムの人各々の解釈が異なるからだ。
何をもって善とするか、悪とするかという解釈は、人それぞれなのだ。
だから、ジョン・ウォーカーにとってのイスラームはタリバンだったというだけだと思う。

ジョン・ウォーカー氏のことを新聞やテレビで目にする度、私は思い出してしまう人物がいる。

それは、ここ純子のお部屋でも前に書いたことのあるマークである。(99年5月23日に記載)
アメリカ人のマークとは、アラビア語の学校で一緒だった。
彼は、もの静かで思慮深く、ほかのちゃらちゃらしている学生とは一風違う印象が最初っからあった。そして、とても優しい目をしていた。
マークは、イエメン滞在4ヵ月後に、シャハーダ(信仰告白)をして、ムスリムとなった。
そんなマークを学校のみんなは腫物に触るように扱って、陰で悪口をいいながら、表面上のおつきあいしかし なくなった。
私は、学校のみんなのそんな態度がすごく嫌だった。偽善者みたいで。
マークがムスリムになった、と言う噂を聞いた時、私が真相をマークに尋ねると、マークは、

『そうだよ。ムスリムになったんだ。今はすごく精神的に落ち着いているんだよ。モスクにサラート(お祈り)しに行くじゃない?そうすると、他のイエメン人達もみんな集まってきていて、アメリカ人のボクのこと歓迎してくれるんだ。そういう中にいるとホッとするし、心も落ち着くんだよね。何か、人種を超えたものがあるっていうかさ。ボクはクリスチャンだったけど、長いこと、ムスリムになるか、迷っていたんだ。今はなってみてすごく良かったって実感しているし、今まで味わったことがないような充実感があるんだ』と熱い口調で語った。

旗でみている私が感じるぐらいなのだから、当の本人のマークは、周りのみんなの態度の変化を痛いぐらいに感じていただろうと思う。
その後、マークは、学校の寮を出て、サナア旧市街のイエメン建築の家に一人暮しを始めた。
プライバシーのほとんどない学校の寮で、みんなから拒否されたような態度をされるぐらいなら、一人暮しの方が気が楽だったのだろう。
周りに惑わされることなく、彼なりのイスラームを感じるには、イエメン人と同じ空気を吸うのが大切だっただろうし。

その後、私は日本に帰国してしまい、マークが今どこでどうしているかは知らない。
今、すごくマークに会ってみたい。
彼の考えるイスラームについて聞いてみたいなぁ。


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