1990年代以降の活動

 虫明康人は、東北工業大学学長を退任した後も、学術分野で精力的な活動を続けて来た。その主なものを要約して列記すると次のようになる。(項目番号は年月順に付してあるが、表示順序は重要度を考慮して並べ替えてある。)

15. ウィキペディアに、自己補対アンテナ」と、「変形近似自己補対アンテナ」の、二つの記事が創設された。

2. 1948年の創案以来、極めて長期間に亘って続けられた自己補対アンテナの研究の成果を取りまとめ、次に示す包括的な英文著としてシュプリンガー・ロンドン書店から出版した。

Self-Complementary Antennas Principle of Self-Complementarity for constant impedance, 139 pages, Springer-Verlag London LTD., London, England, 1996.

6. 所謂「対数周期アンテナ」が超ブロードバンド特性になり得るのは、自己補対形状のアンテナから導かれた場合だけであるにも拘らず、対数周期形状自身に超ブロードバンド性があると誤解して解説した記事が、次に示す学会誌に掲載され、更に同様な誤解をしている研究者・技術者がいることを知った。

 電子情報通信学会誌、Vol. 80, No. 5, p. 424, 19975.

 それ以来虫明はこの誤りを正す運動を展開し、その一環として次に示す記事を学会誌に発表した。

 「対数周期(ログペリ)構造はアンテナに広帯域性を付与しない, 電子情報通信学会誌,Vol. 82, No. 5, pp. 510-511, 19995. 

4. 1996、故宇田新太郎先生の生誕百年を記念して、同先生が八木・宇田アンテナの発明に対して果たされた主導的役割を、 再評価する運動を展開した。実はその頃、同発明に関して宇田先生を中傷する誤った内容の某著書が出版され、元宇田研究室出身者・関係者から出版社・著者に 対する厳しい非難の声が寄せられていた。虫明はこの不当な誤りを正すため、東京で開かれた電気学会電気技術史研究会において、次の表題で口頭発表を行っ た。

  「旧論文の内容誤認による電気技術史の不当な歪曲を正す」、 資料番号、HEE-96-15, 1996911.

8. 次に示す著書を出版した。

  「電波とアンテナのやさしい話 超ブロドバンド化の原理の発見」、174頁、オム社、2001.

  本書は、電波とアンテナの基礎的事項と自己補対アンテナなどを平易に解説すると共に、日本の社会に受け容れられない創造性について私見を述べ、そのような社会の旧来の体質を批判している。

  8A. 本書の出版理由に関連ある別の事件巻頭言の記録。

(以上が重要項目を表示した部分である。)

1.  アメリカの学会IEEEからの招きにより、自己補対アンテナの研究概要を、下記の Invited Feature Article として発表した。

Self-complementary antennas, IEEE Antennas and Propagation Magazine, Vol. 34, No. 6, pp. 23-29, December 1992.

3.  次に示す論文をインスブルックでの学会で口頭発表した。

  “Mutual impedances between loaded unipole-notch type self-complementary antenna elements, PIERS, Innsbruck, July 1996, p.465. (Co-authored by T. Kasahara).

5.  IEEE Antenna Standards Committeeから招かれて、1998622日にアトランタで開催された同委員会の会議に出席し、自己補対アンテナに関する用語の提案を行った。

7. 次に示す招待講演を中国の西安で行った。

  Self-Complementary Antennas, China-Japan  Joint Symposium on Antennas and Propagation,  Xian, China, 2000316.

9. IEEEからの招きにより、2003625Columbus, Ohio において下記の招待講演を行った。

A report on Japanese developments of antennas from Yagi-Uda antenna to self-complementary antennas”, AP-S Digest, 3, pp. 841-844, 2003 IEEE AP-S International Symposium.

10. 上記の講演内容を、次に示すInvited Feature Article として発表した。

A report on Japanese developments of antennas: From the Yagi-Uda antenna to self-complementary antennas”, IEEE Antennas and Propagation Magazine, Vol. 46, No. 4, pp. 47-60, August 2004.

11. 仙台で開催された 2004 アンテナ・伝播国際シンポジウムにおいて、下記の招待講演を行った。

  “Creation of the novel technologies for antennas in Japan with particular emphasis on self-complementary antennas, 2004 International Symposium on Antennas and Propagation, Sendai, August 18, 2004.

12. 所謂「対数周期アンテナ」の超広帯域性は、“自己補対の原理”によって生じているものであるにも拘らず、若干の不勉強な人は、その広帯域性はアンテナの対数周期形状に基くものであると、未だに誤解している。虫明は、このような非常識な誤解を正す目的で、2005年の12月初頭に、一つの提案を行った。


13. IEEE 東京支部創立50周年記念式典において、同支部より Distinguished Service Award for IEEE Chapter Activities を受賞した。同式典は2006312006 IEEE PresidentMichael R. Lightner 博士の臨席の下に、東京で挙行された。

14. GS2007年9月頃、同氏が執筆した未発表「電波史」原稿の内容について、虫明に意見の有無を尋ねた。虫明はその原稿中の、宇田新太郎先生のご業績に関連する部分の記述に対して反論を行った。それ以来、2008年2月頃まで長期間に亘って論争を続けたが、結局、意見の一致は見られなかった。虫明は止むを得ず、小論「特許出願と論文発表」をしたためて反論を打ち切った。
この小論は、虫明の「最近の活動」第4項で述べた八木特許に関連する拙著論文の補足、或いは、続編ともいうべきものではあるが、実はこの件についての核心に触れたものとなっている。

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